【4歳5ヶ月】姿勢が崩れやすく身体がふにゃふにゃしているように見える子へのアプローチは?

ケース検討

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今回は、4歳5ヶ月の幼稚園に通う男の子について、幼稚園の先生からの相談という設定でケース検討をしていきたいと思います。
クラスに1人は、こんなタイプのお子さんがいらっしゃるのではないでしょうか。
そのお子さんのことを思い浮かべながら読み進めていただければと思います。
(注)このケースは架空の人物です。

どんな情報を集めるといいのか、どんな理由が考えられるのかを検討した後に、アプローチ方法についても考えていきたいと思います。

ケース紹介

幼稚園に通っている4歳5ヶ月の男の子。
人懐っこい性格です。
椅子に座ると姿勢が崩れやすく、すぐに隣の人や壁にもたれかかってしまいます。
身体がふにゃふにゃしているように見えます。
絵本やミニカーで遊ぶことが好きですが、寝転がって遊んでいることが多いです。

【質問】
姿勢が崩れないようにするには、どうしたらいいですか?

(注)このケースは、架空の人物です。

情報を集めて理由を考える

ケース検討では、とにかくお子さんの情報をいろんな視点から集める作業から始まります。
情報を集めると言われると難しく感じるかもしれません。

机に向かう活動のときは、どんな姿勢でしてたかな?

砂場で遊んでるときは、お尻を地面に付けずに遊んでいたかな?

といった日頃の様子を思い返しながらまとめる感じです。
そう思うと難しくないと思います。

アプローチ方法を教えて欲しいと言われることが多いですが、アプローチは一番最後の作業。
まずは、身体の使い方やお友だちとのやりとりの様子などいろんな場面から、どんなお子さんなのかを客観的に捉えていきます。

最初は、何を見たらいいのか分からないと思います(私もそうでした)。
このブログを通して、見る視点を知って頂けると嬉しいです。
できないところばかりが目に行きがちかもしれませんが、得意なところも一緒に洗い出してあげることで、突破口が見つかることはよくあります。

ICFとは

ICFとは、WHO(世界保健機構)が2001年に採択したもので、日本語では「国際生活機能分類」といいます。
ICFは「健康状態」「生活機能」「背景因子」の大きく3つのカテゴリーに分かれています。生活機能の中には、心身機能面、活動(生活)、参加(対人面や社会参加など)の3項目があります。背景因子の中には、環境因子、個人因子の2つの項目があります。

作業療法士は、このICFを使って情報を集めていくことが多いです。対象となるお子さんの状態をそれぞれ得意な点、課題となる点をリストアップし、どこにアプローチをかけると良いかを考えていきます。

感覚

「姿勢が崩れやすい」「身体がふにゃふにゃしている」「すぐに寝転ぶ」のような様子に大きく関わるのが、「前庭覚」と「固有受容覚」といわれる自分の身体を知るための感覚です。
これらの感覚の感じ方にアンバランスさが影響している可能性があります。

前庭覚

前庭覚ぜんていかくは、自分の身体がまっすぐか傾いているかどうか、バランス感覚など重力のある環境の中で自分の身体がどうなっているのかを知らせてくれる働きをしています。
このお子さんは、この感覚をうまく感じ取ることが難しいため、自分の身体が今どのくらい傾いているのかが分かりにくいのかもしれません。
また、すごく身体が傾き姿勢が崩れた状態になってはじめて、「身体が傾いているかも?」と気付いている可能性も考えられます。

さらに、前庭覚は筋肉の張り具合(筋緊張きんきんちょう)のコントロールにも大きく関わります。もともと柔らかい筋肉をしている場合、重力に対抗して姿勢を保ち続けることが難しく、とても疲れやすくなります。また、頭が重くてしっかりと支えられないことも考えられます。疲れていたり、自分の身体を支えようとした結果、友だちや壁にもたれかかっているのかもしれません。

保護者向けに書いた前庭覚の働きについての記事です。

固有受容覚

固有受容覚こゆうじゅようかくは、自分の手が今どの位置にあるのか、どのくらいの力を入れて動かしているのかを教えてくれる感覚です。
このお子さんは、この感覚をうまく感じ取ることが難しいため、姿勢を保つために必要な筋肉にどれくらいの力を入れたらいいのかが分からない可能性があります。

保護者向けに書いた固有受容覚の働きについての記事です。

身体の使い方

今回のお子さんは、椅子に座ると姿勢が崩れやすく、身体がふにゃふにゃしているように見えるということでした。まず、この2つについてもう少し深く見ていくために、身体を動かす遊びのときや、机に向かって遊んでいるときなど様々な場面での姿勢や運動の様子を確認していきます。
また、このお子さんの運動発達の段階を確認することで、現状を知り次のステップに進むためにはどんな活動を取り入れると良いかが見えてきます。

姿勢・運動の様子

下記の表を参考に、いろんな場面での姿勢や運動の様子を細かく見て、気づいたことをまとめてみましょう。うまくできない理由を考えるときのヒントが見つかります。