
どうして私たちは、生活の中で身体を思い通りに動かすことができるのでしょうか。
- コップを取ってお茶を飲む
- 段差にひっかからないように、足をあげてまたぐ
- 洋服をスムーズに着替える
これらの動きは、生活で普段何気なくしていることですよね。
それは、感覚がしっかりと身体の中で働いてくれているからなんです。
今回は、この感覚の1つである「前庭覚(ぜんていかく)」について、お話したいと思います。
感覚についてはこちらの記事をご覧ください。
前庭覚のはたらき
前庭覚といわれるとイメージしにくいと思いますが、「三半規管」と言われるとイメージしやすいと思います。
姿勢の保持や運動に関わる

上の写真のお子さんのように、上手に座ったままボールを両手で持つことができているのは、この前庭覚がしっかりと働いてくれている証拠。
前庭覚は、姿勢を正して座れているのか、社長さん座りのように姿勢が崩れてしまっているのかというように、自分の身体がまっすぐなのか、傾いているのかを教えてくれます。
また、姿勢が崩れないよういい具合に筋肉の張り具合(筋緊張)を調整したり、バランス感覚も担っています。
前庭覚の役割①
- 身体の傾きやまっすぐが分かる
- バランス感覚
- 筋肉の張り具合(筋緊張)のコントロール
学習の土台

前庭覚は、目の動きのコントロールと密接に繋がっています。
ちょっとここで実際に体感してもらおうと思います。
このブログをスマホやタブレットで読んでくださっている方は、それを持ったまま目の高さで、手を振ってみてください。文字は読めましたか?
読めません!
そうですよね。
では今度は、それらを持ったまま手は動かさず頭を上下左右に振ってみてください。文字は読めたでしょうか?
わあ!読めた!
不思議!
これは、頭の傾きに合わせて、目の動きをピピピと動かして、文字がブレないように瞬時に調整してくれているからなんです(この働きのことを前庭動眼反射といいます)。
この目の動きのコントロールは、上の写真のようにぬりえの絵柄と色鉛筆を交互に見るような動きや、学校の板書、教科書とノートを見比べたりする際に関わってきます。
また、普段は車酔いしないのに今日は車に酔って気分が悪いなあ…ということもあると思います。
これは、前庭覚と自律神経が繋がっているから起こることなんです。
前庭覚の役割②
- 目の動き(眼球運動)のコントロール
- 自律神経との連携
気持ちのコントロール

ボールプールのような身体が揺れる経験をたくさんできる非日常的な遊びが大好きなお子さんは多いと思います^^
知らない世界は刺激がいっぱい!
たくさん身体に感覚刺激が入ってきます。すると、興奮してハイテンションになってきますよね。
反対に、電車のような心地よい揺れは、眠たくなってウトウトしてしまう方も多いはず。このように、前庭覚は脳の目覚めの状態をコントロールする役割も担っています。
また、ハイテンションで楽しい!眠たくて不機嫌というような気持ちのコントロールにも関わっています。
前庭覚の役割③
- 脳の目覚め(覚醒)のコントロール
- 気持ちのコントロール
おすすめの本
感覚について初めて学ぶ方、保護者の方や保育士・教師の方にいつもご紹介している本です。
ケース別によくある困りごとが紹介されています。
また、大人から見ると理解しにくい言動の理由やその対策について、専門用語を全く使われていないため、とても分かりやすくてオススメです^^
まとめ
今回は、自分の身体を知るための感覚の1つである“前庭覚”の役割についてお伝えしました。
前庭覚には、
☑︎姿勢の保持や運動に関わる働き
☑︎学習の土台
☑︎気持ちのコントロール
など、私たちが生活をスムーズに送る上で大切な役割を担っています。
次回は、前庭覚がうまく感じられない/感じ過ぎてしまうとどうなるの?という内容をお伝えします。
前庭覚を知ると姿勢が崩れる、動き回るというようなよくあるお子さんの言動へのアプローチが変わってきますよ^^