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「触覚」がうまく働かないとどうなるの?
触覚は、危険から身を守ったり、触ったものが何か分かったり、自分の身体の輪郭(ボディイメージ)の育ちに関わる感覚です。
私たちが三角形と四角形の違いが分かったり、スマホを操作したり、包丁で野菜を切ったりできるのは、この触覚がしっかりと働いてくれているから。
では、もしこの触覚がうまく働いてくれないとどうなるのでしょうか。
触覚の働きを知ると、学習面のつまずきの原因や触ることを極端に嫌がることの理由が分かるかもしれません^^
触覚の働きについては、自分の身体を知るための感覚。「触覚」ってなあに?の記事をご覧ください。
プロフィール
- こども専門の作業療法士
- リィーノこどもセラピー 運営(6年目)
(発達が気になる、学習につまずきのある子の教室) - リィーノ発達ゼミ運営(のべ250人受講)
(子どもに関わる職種のためのセミナー・ブログ) - 幼稚園・保育所、小中学校の巡回相談員
- 保護者・職員向けのセミナー依頼 年30件以上
触覚がうまく働かないと、どうなるの?
触覚がうまく働かないと、日常生活の中でどのような影響があるのでしょうか。
よくある例を挙げてみたいと思います。
- 痛みを感じにくく、怪我に気づきにくい
- 極端に粘土や砂遊びを嫌がる
- 少し汚れると気になって服を脱いでしまう
- 手先が不器用で、道具操作が苦手
- 図形や文字などを見て捉えることが苦手
- 1/3に分けるなどの数的概念の理解が難しい
- ママパパから離れることへの不安が高い
- 興奮しすぎてしまう
上記に挙げた例は、触覚以外にも様々な要因が絡んでいることの方がほとんどです。
つまり、子どもたちはわざと触るこを嫌がったり、ママパパを困らせるためにずっと砂場から帰らない訳ではないということ。
実は、子どもたちの困り感の要因に、身体の感覚の感じ方が影響している可能性があります。
このことを知っておくと、お互いのフラストレーションは軽減できるかもしれません^^
どうしたらいいの?
触覚を感じやすいタイプと感じにくいタイプでは、アプローチが変わってきます。
また、日によって感じやすいときと感じにくいときが混ざっていることもあります。
感覚の感じ方については、感覚の感じ方はみんな違う!?の記事をお読みください。
触覚を感じやすいタイプには
無理強いは絶対にしない!
製作のときに使うのりや砂遊びなど手が汚れることが予測される場合は、拭くものを必ず用意しておいてあげましょう!
これくらいいけるでしょ!
大丈夫よ!
このような言葉がけは絶対にしてはいけません。
私たちが蛇をどうしても触らないといけないことがあったとき、触ったとはすぐにでも手を洗いたいですよね。
それと同じことなのです。
でも、余裕がないとき、時間がないときは言ってしまうこともあると思います。
そんなときもあります。
頭の片隅に、このお話を入れておいてもらえると嬉しいです。
たとえば、粘土あそびなど触ることを嫌がる活動は、透明のビニール袋の中に入れて袋の外側から触らせてあげてください。
“絶対に汚れないから大丈夫!”という安心できる環境で取り組ませてあげると、少しずつ触ってみようかな…と思う気持ちも芽生えてきやすいですよ^^
圧をしっかりとかけて触ってあげて
ぎゅうっと大人の手や身体の「面」で触ってあげてください。
圧をかけて触ってあげることで、固有受容覚という感覚が働くため、触覚の刺激を抑えてあげることができます。
固有受容覚のはたらきについては、こちらをお読みください。
触覚過敏だからとそーっと触ってしまう方が多いですが、それは逆効果。
私たちもそーっと触られるとゾクゾクすることってありますよね。
そーっとは触覚の刺激量が強くなってしまうんです。
また、触るときは目で見て確認できるところから触れてあげましょう。
私たちも首元をいきなり触られたらゾッとしますよね。
手や足など見えるところを“ぎゅうぎゅう”と声かけをしながら触れてあげてください。
触っても許せる素材を少しずつ見つけよう
触覚過敏の原因はひとりひとり異なります。
そのものが得体の知れないもの=怖いと思っていて触れない場合と、この素材が苦手だから触れないという場合では、アプローチは変わってきます。
たとえば、着替えを嫌がるお子さんについて考えてみたいと思います。
着替えを嫌がる理由が、素材の問題なのか、タグがチクチクするのか、それとも服の色なのか。。
他にも、着替えをする必要性を感じない、着替えをしたあとの見通しが持てていないことも考えられます。
もし嫌がる理由が素材の問題であれば、本人にとって着心地のいいものを探していくのが解決策になるということです。
ちなみに、うちのきょうだいさんは、タグが付いているものはNG&赤色の服ONLYだったそうです(笑)
触覚を感じにくいタイプには
圧がしっかりと入る遊びを
四つ這いや手のひらで粘土のお団子を押しつぶすなど、手足にしっかりと力が入る活動をたくさん取り入れてみてください。
これらの活動は、触覚だけでなく固有受容覚という筋肉にどれくらい力が入っているかを教えてくれる感覚も働いてくれます。
そのため、自分がどのように身体を動かしているのかをイメージしやすくなります。
固有受容覚を育む遊びやお手伝いをこちらの記事で紹介しています。
また、触覚を感じにくいことは私たちの生活の中でもよくあることなんです。
例えば、冬場は手袋をつけてスマホを操作する方も多いかも知れません。
素手のときと手袋をつけたとき、操作の差を感じませんか?
これは、手袋によって触覚のセンサーが遮断されてしまったため、うまくスマホ画面の情報を得られないことが原因で起こってきます。
お風呂で身体を動かしてみて
湯船の中では全身が水に包まれていますね。
水の中は水圧があるため、地上よりも自分の身体の動きが感じやすくなります。
ボールプールや夏場のプール遊びは、触覚を育む絶好のチャンス!
また、泥あそびや泡あそびなど触る遊びもできる限り経験させてあげてくださいね!
まとめ
今回は、触覚がうまく働かないとどんな姿が見られるのか、どうしたらいいのかについてお伝えしました。
触覚の感じ方が生活や遊びの中での気になる行動に繋がっていることを知っていただけると嬉しいです。
それでは、まとめです。
- 触覚の感じ方は人それぞれ。
- 大人から見ると気になる子どもの行動は、触覚の働きが大きく関わっている。
- 触覚が感じやすいタイプ(慎重さん)は無理強いは絶対にしないこと。圧をかけながら手や足を触ってあげて。
- 触覚を感じにくいタイプは、同じ遊びではなく少し変化を付けて刺激量を調整すること。声かけの工夫をすると、して欲しい行動に繋がるかも。